碧き光

†† vol.4 ††




「あ、ああああぁ……ジョーっっ!」
「フランソワーズっ!!」

 共に登りつめ、宙に放り出される。
 深く、深く繋がった絆から、生命の鼓動が聴こえた。

 汗ばみ火照ったジョーの躯が自分の躯へと降り、ぴったりと吸い付くように重なる。

 躯中に感じる。彼の存在。
 彼の想い。

 満たされた自分の躯と心。

 ぼんやりと白濁する意識を懸命に引き寄せて、フランソワーズは薄く目を開いた。
 






 未だ幾分霞んでいるものの、ジョーの焦茶色の髪と、その髪の中に有る自分の白い指が、レースのカーテンの隙間から差し込む光に照らされて描き出されていた。
 ゆっくりと、窓へと視線を巡らせる。碧い空に広がる薄い雲。柔らかな陽射し。
 





「ジョーが……私に…教えてくれたのよ」

 弾んでしまった呼吸(息)の合間をぬって、フランソワーズは言葉を繋ぐ。
「教えた? 僕が?」
「ええ。私も……ただのオンナなんだって…。貴方はいつでもこんなふうに……私をただの女性に還してくれるわ」

 「003」では無く、「フランソワーズ」に―――。
 臆病で泣き虫で、寂しがり屋で甘えん坊な、極普通の女性に戻してくれる。
「それは、僕だって同じだよ。君を感じている時が、一番『生きてる』って実感出来る」









「それなら……ずっと、傍に居させて。こんなふうに、ずっと抱き締めていて」
「フランソワーズ…」








 ジョーはゆっくりと顔を上げると、フランソワーズを見つめる。

 碧い……何処までも碧い瞳が、優しく温かくジョーを真っ直ぐに捕らえた。
 熱を帯びた互いの視線が、極自然に絡まり合う。

「……見えて、いるの?」




 恐る恐る尋ねるジョーに、フランソワーズはその瞳を潤ませながら「ええ」と花のように微笑む。

 見えている。
 ……しっかりと。
 その表情を隠してしまう長め前髪。男性らしい顎のライン。形の良い唇。
 そして、切なくも優しい赤茶色の瞳に、彼を見つめる自分の顔が映り込んでいた。

(きっと……私の瞳にも…)

 彼の姿が映っているのだろう。
 この世でたった1人の魂を焦がす男性(ひと)の姿が……。





「私が空なら……ジョーはお日様、ね」

 フランソワーズはふと思いついた事を、そのまま言葉にする。
「僕がお日様?」

 ジョーは訝しげに小首を傾げる。
 自ら光を放ち輝く太陽は、自分とは一番遠いものに感じた。フランソワーズならぴったりだが、自分には相応しくない。

「だって……空が『碧く』見える為には、お日様が必要なのよ」

 太陽の位置次第で、空は碧かったり、茜色だったり、闇に沈んだりする。
 自分も同じだとフランソワーズは思う。


 彼の何気無い言葉が嬉しかったり…
 彼と離れていると、どうしようもなく不安になってしまったり…
 彼の手で……こんなふうに茜色に染められたり…

「貴方が居てくれなかったら、私は私じゃなくなってしまうわ」





「それは僕の台詞だよ」







 2人は微笑み合うと、互いに髪に指を差し入れ、唇の距離を縮めながら、ゆっくりと瞳を閉ざした。


















 Fin






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祐浬 2003/1/15