安らげる場所




 コンコン……

(ジョーだわ)

 戦闘後、ドルフィン号の自室で着替えていたフランソワーズは、扉の向こうに居るのがジョーであることを、その眼で捕らえると、慌てて脱ぎかけていた戦闘服の上着を着なおした。
 ズボンも履こうかと一瞬迷ったものの、あまりジョーを待たせるわけにはいない。
 上着だけでも取り敢えず下着が見えることがないことを鏡で確認し、廊下にジョー以外の姿が無いことをもう一度注意深く見てから、フランソワーズは扉の鍵を外し、ドアを押し開いた。

「フ、フランソワーズ?」

 彼女のその姿を見て……ジョーは一瞬凍り付き、直後、ぼぼっと顔を赤く染めた。

(か……可愛すぎる!)

 超ミニ丈の戦闘服から伸びる、すらりしとた白い脚が艶かしい。

「ごめん、着替え中だったんだ」
「ううん、いいの。それより早く部屋に入って。誰かに見られたら恥ずかしいわ」

 ジョーの視線に気付き、ほんのりとピンク色に頬を染めるフランソワーズ。

「あ、うん」

(誰かに……?)

 それは駄目だ!

 他のメンバーにこの彼女の悩殺スタイルは見せたくないと、ジョーは急いで部屋に入り扉を閉めた。
 《当然、鍵もしっかりかける(笑)》

「あ…僕も着替えが終わるまで外で待っていようか? あ、迷惑なら出直すし」

 思わず部屋に入ってしまったものの、彼女が着替え中だということを改めて認識し、ジョーは慌てて尋ねる。

「迷惑じゃないわ。ジョーなら……いいの…」
「僕なら?」
「ええ。だって……ジョーは特別ですもの」
「フランソワーズ……」

 フランソワーズの意味深な言葉に、ジョーは再び顔を赤らめる。

「それで……どうかしたの?」

 フランソワーズは、彼が自分を尋ねて来たその理由を尋ねる。

「いや……その……」
「何か…悪いこと?」

 言葉を濁したジョーに、フランソワーズは不安を抱く。

 また…戦わなければならないのだろうか。
 また、彼が危険な場所に飛び込んで行くのを見送らねばならないのだろうか。
 
「ううん。違うよ」

 俯き、哀しげな表情に変わってしまったフランソワーズ。彼女が何を危惧し、何に怯えているのかその表情から簡単に読み取れたジョーは、彼女を堪らなく愛しく感じる。
 
 抱き締めたい。

 湧き出したその欲望に、ジョーは素直に従い、ふわっと抱き締める。
 彼女の亜麻色の髪から、優しい匂いがした。

 フランソワーズはジョーの突然の行動に少しだけ驚いたものの、その腕から逃れようという気は欠片も起こらなかった。
 ジョーから直接伝わってくるぬくもりが、嬉しくて、苦しくて……切ない。

「ジョー……」
「君の顔が見たかっただけ」

 耳元で囁かれたジョーの言葉に、フランソワーズは目を細める。
 嬉しかった。
 けれど……不安は完全には拭えない。

「戦場(向こう)で……何かあったの?」
「別に……何もないよ」
「ホント?」
「何かあったのなら、君には視えていた筈だろ?」
「そうだけど……」

 確かに、自分は彼の戦いを視ていた。
 勿論、見ていたのは彼ばかりではない……戦闘中は極力多くの情報を得るようにしている。
 それが、自分の役目だから。

 ジョーはひょいとフランソワーズを抱き上げると、ベットへと座り、彼女を膝に乗せたままもう一度彼女の細い躯を抱き締めた。
 彼女の体温と鼓動と柔らかさを……自分の身体で感じ取る。

「ジョー?」

 自分の胸に顔を埋めるジョーを、フランソワーズはどぎまぎと見つめる。

「ちょっと……疲れた、かな」
「だったら眠った方が…」
「こうしている方が、休まるよ」

 そう言ってジョーは、フランソワーズの首筋に唇を這わせる。
 フランソワーズはびくんと大きく躯を震わせる。

「……ジョー」
「着替え……手伝ってあげるよ」
「あ……」

 ジョーは彼女の戦闘服の後ろについているジッパーをゆっくりと降ろし、徐々に露になっていく彼女の白くて滑らかな肌に次々と口づける。
 その度にフランソワーズは、小さく吐息を零した。

「…あ・・…だめよ。ジョー……」
「何がだめ?」

 胸元に唇を押し当てたまま、ジョーはちらりとフランソワーズの顔を見上げる。
 彼女の頬は鮮やかなピンク色に染まり、自分を見つめるマリンブルーの瞳がとろんと潤んでいた。

「だって……未だ……シャワーも、浴びてないし……」

 フランソワーズのそのささやかな抵抗…に、なってはいない抵抗が可愛くて、ジョーは思わずくすっと微笑む。

「そんなこと…、僕は全然構わないよ」
「でも……」
「じゃ…後から一緒に入ろうか」

 ジョーはそう言って、彼女の素肌と自分を遮る最後の砦(下着)のホックをそっと外した。 


― Fin ―
 


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祐浬 2002/5/10