永遠(とわ)に…
†† vol.1 ††



 ――フラン…ソ…ワーズ……――

 燃えるような紅に染まった空。
 その空を貫く一筋の流れ星。

「ジョーっ!!」

 聴こえた。

 微かに…
 けれども波音にも掻き消される事無く届いた、自分の名を呼ぶ愛しい声。

 視えてしまった。

 一直線に落ちる流れ星を……
 その正体を。

 彼を救いに行ったジェット。
 そして……最愛の男性(ひと)が炎に焼かれている姿を。





「ジョー……」

 そっと、彼に呼びかける。
 返事が返って来る事が無いと知りながら。
 それでも……何度も、何度も、彼の名前を呼ぶ。
 そして、祈る。

「ジョー……早く、還って来て」

 私の元へ…。

 フランソワーズはベッドに横たわる彼の手に、自分の手を重ねる。
 温かな手。
 あの時と何も変わらない、彼の温もり。

 地下帝国「ヨミ」に仕掛けられた爆弾。残された時間は僅か30秒しかなかった。
 魔人像を追いかけようにも…ヨミから脱出しようにも、自分達にはその術が無かった。
 正に絶体絶命だったのに関わらず、不思議と死は怖くは無かった。
 怖かったのは、別の想い(もの)。
 
 それは漠然とした予感。
 彼が遠くへ……自分の手の届かない場所へ行ってしまうような。

 だから……彼が何処へも行ってしまわぬように…離れてしまわぬように、彼の腕に縋った。

 ずっと…ずっと彼と一緒に……
 それだけが自分の望みだった。

 だが、それが叶わぬ事を知った。

 ぎゅっと強く自分の手を握り返してきた彼の手の温もり………想い。
 ―――覚悟。

 優しく切ない笑顔を残して、彼は自分の元から……再び自分が行くことの許されぬ禁域へと旅立ってしまった。

 この手をすり抜けて……。

 ――僕はここに居る。これからもずっと…――

 ヨミへと向かう前夜、そう約束してくれた彼。

(約束……守ってくれたのね)

 約束通り、彼の身体は自分の元へと還って来た。

 成層圏から地上へと落下するジョーとジェットを救ったくれたのは、001だった。
 2人が地面へと激突する前に……その身体が燃え尽きて灰になる前に、自分達の元へと瞬間移動させてくれた。
 001の超能力(力)がなかったら、ジョーもジェットも今ここには存在しなかっただろう。

 焼け爛れ、惨い姿に変わり果ててしまった彼等を、自分達と共にボグートとサイボーグマン達に破壊されてしまた研究所へと転送してくれたのも、001(彼)。
 力(超能力)を酷使した001は、「ごめん」と小さく謝罪し、その直後、眠りに落ちてしまった。

 瀕死の重傷だった2人を、火災を免れていた研究所の地下へ運び、ギルモア博士が総力をあげて治療した。
 それでも……もう10日経った今でも、2人は未だ生死の境を彷徨っていた。

 たくさんの点滴のチューブやコードが、彼の身体に纏わり付いている。
 それらが彼のおぼろげな命を辛うじて繋ぎ止めていた。

「ジョー……聴こえてる? もう、置いてけぼりは、嫌、よ」

 握っても、反応の無い彼の手。
 けれど、フランソワーズはその手を離すことが出来なかった。
 離したら、また、彼が遠くへ行ってしまう気がした。

 今度こそ、本当に自分の手の届かない黄泉(場所)へ。

(もう、離さない……もう絶対に、離れない…)

 例え、どんな事があっても…
 彼の行く場所には、どんな場所にだってついて行く。
 ………一緒に。

 目から溢れた涙が頬を伝って、自分の手に落ちる。

 乾くことの無い涙。
 泣くことと祈ることしか出来ない、今の自分が歯痒かった。

「ジョー……早く目覚めて……還って来て」

 この手を握り返して。
 微笑んで。
 ……あの時と同じように。


 

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祐浬 2002/10/4