How Cute!




「ジョー、見て見て♪」

 バンッと、リビングの扉が勢い良く開かれ、フランソワーズが跳び込んで来る。

「!?」

 彼女にしては頗る珍しい登場の仕方だったので、リビングに居た者達は、言われずともフランソワーズへと視線を送った。

「いっ……」
「っっっ」
「………。」

 フランソワーズの姿を見て、002は飲みかけていたコーヒーを吹き出し、004は座っていたソファから危うく滑り落ちそうになり、ジョーは……凍結した。

 3人が驚くのも無理は無い。
 何故なら、フランソワーズは純白のドレス姿。

 透き通るほどの白い肌。柔らかな肩のライン。きらきらと輝く亜麻色の髪。艶やかに濡れたピンク色の唇。
 胸元にレースの飾り花とフリルの付いた、踝丈の可愛らしいドレス。
 流石にベールとブーケはつけてはいないが…それは何処をどう見ても……ウェディングドレスだった。

「あ……///」

 リビングにジョー以外の人物(002、004)が居た事に気付き、フランソワーズは、かぁぁぁっと頬を朱に染める。

「だあぁぁぁぁぁっっ お前等っ! いつの間に結婚したんだぁぁ!?」

 002が素っ頓狂な声をあげる。

「え……?」
「水臭せえじゃねーかっっ! 仲間だろっっ それならそーと言ってくれれば!」
「ちょ、ちょっと…002……ちがっ」

 条件反射的にジョーの首を腕を巻きつけ締め上げる002に、やっと凍結状態から溶け出したジョーがしどろもどろに答える。

「畜生! これで晴れてフランソワーズは、お前のものってコトかよっっ この野郎!」
「いたた……002、違うよ」
「何がどー違うって言うんだっっ つーか、違うってゆー方がフランソワーズに失礼だろーがっっ お前等恋人同士だろーが!」

 半眼になって更にジョーの首を締める002。

「え? あ……それは、違わないけど……」
「ほらやっぱり違わねぇんじゃね〜〜〜かっっ」

「ジェット! やめてっ 違うの。そうじゃなくて……」

 一方的に002にぼこぼこにやられているジョーを見て、フランソワーズが2人を止める。

「違うのなら……どうしてそんな格好をしてるんだ?」

 002の制裁を容認していた004が問う。

「あの……私、ジョーを驚かせようと思って。これ、お友達のを借りたの。ご、ごめんなさい! 私、ジョーしか居ないと思ったから……ジェットとアルベルトが来ているなんて、知らなくて……本当にごめんなさい」

 フランソワーズは顔を真っ赤にして謝罪すると、一目散にリビングを後にする。
 ぱたぱたぱた…と、フランソワーズの足音が遠くなって行った。

「……だと、さ」

 フランソワーズの説明でやっと状況が飲み込めた004が、未だしつこくジョーの首を締め上げている002に声をかけ、ジョーを解放するよう促す。
 しかし、002はジョーを解放するどころか、更にめらめらと燃える瞳で言い放った。

「てめぇら、いつもそーゆーコト(コスプレプレイvv)してんのかぁぁっっっっ」





「フランソワーズ?」

 ジョーは控え目にフランソワーズの部屋の扉をノックした。
 暫くすると、そろそろと扉が開かれる。

 そこには……未だ、純白のドレスに身を包んだままのフランソワーズが居た。
 少しだけ瞳が潤んでいる。

「入っても…良い?」
「勿論だわ」

 フランソワーズはジョーを部屋へと通す。
 いつ来ても、フランソワーズの部屋は綺麗に片付けられている。それに明るい色調で整えられ、彼女と同じ優しい香りがした。

「ジェットとアルベルトは?」

 扉を閉めてから、フランソワーズが問う。
 眼や耳を使えば、たちどころに彼等の居場所など掴めるのだが、フランソワーズはそれをしない。
 戦いの時以外は極力「普通の女性」で有りたいと彼女が思っている事を、ジョーは良く知っていた。

「2人とも帰るって…」
「どうして? 今、来たばかりなのに」
「さあ……僕も止めたんだけど、「馬に蹴られる前に帰る」って」

 ジョーは不思議そうに小首を傾げる。

「私……呆れられちゃったのかしら……」

 フランソワーズは、くすん、としゃくりをあげる。

「違うよ! 違うと、思うよ……だって、2人とも目の保養になったって言っていたし。僕もそう思うし………その……凄く、綺麗だよ」
「あ……ありがとう、ジョー」

 ジョーの照れながらの言葉に、フランソワーズは大きな瞳を益々大きく輝かせると、顔を綻ばせた。
 その至上の微笑みに捕らわれて、ジョーは彼女から目を離せなくなる。

 ウェディングドレス姿のフランソワーズは、本当に綺麗だった。
 綺麗過ぎて、触れてはいけないもののような気がした。

 自分の手はきっと彼女を汚すだろう。

 眩しい笑顔。
 その魅惑的な微笑みを見せるのは、自分だけであって欲しい。

 誰にも見せたくない……
 自分以外の男性の目の届かぬ場所に閉じ込めてしまいたい。

(……僕は……何て……)

 自分の強烈な独占欲に気付き、ジョーは苦く笑う。

「いつまでもこんな格好で居たら駄目よね。また誰かを驚かせちゃうと困るし……着替えるから、ジョー、少しの間向こうを向いていてね」
「あ……うん」

 ジョーは言われた通り、回れ右をしてフランソワーズに背を向ける。

 ジョーが見ていないことを確認してから、フランソワーズはクロゼットから着替えを取り出すと、ジョーに背を向け、自分の背中に手を伸ばし、ファスナーに指をかける。
 バレエをやっていたので身体の柔軟さには少しは自信がある。背中のファスナーも楽に外せる筈だった……が、レースの飾り花やフリルが邪魔で、思うようにファスナーを降ろす事が出来ない。

(やだ……どうしよう……)

 何度やっても上手く行かない。
 困り果てていると、するするするとファスナーが降ろされた。

「きゃっ!?」

 はらりと落ちそうになったドレスの胸元を慌てて抑える。胸元が大きく開いているドレスのため、下着(ブラジャー)は着けていなかった。

「ジョー!? 向こう向いててって言ったのに……」

 もうっと少しだけ膨れて、フランソワーズは降り返る。
 しかし、それよりも早く、ジョーはフランソワーズを後ろから抱き締めた。

「僕が脱がせてあげる」

 ジョーはそう言うと、フランソワーズの首筋に、肩に……露になった背中にキスを降らせた。


― Fin ―
 


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present for ようれさま

祐浬 2002/6/2