星の破片(かけら)



                             









「ねぇ、ジョー……見て」
「え?」

 彼女のすらりとした……細くて白い両手に大事そうに包まれているソレを、ジョーは、ひょい、と覗き込む。

 それは――ただの貝殻の破片。
 けれど、妖しく煌く銀色の月の光を受け、きらきらと虹色に輝いていた。

「……きれい、だね」

 ジョーはそっと……まるで雛鳥を包むように優しく、フランソワーズごと、その小さな破片を包み込む。

「まるで………宇宙(そら)から零れ落ちたお星様みたい」
「……フランソワーズ?」

 フランソワーズの艶やかなピンク色の唇から零れた、寂しげな言葉に、ジョーは、はっとし、顔を上げる。

 澄んだ碧い瞳が、ほんの少しだけ……潤んでいた。

 どんな言葉をかけて良いのか分からず、ただ彼女を見つめることしか出来ないジョーに、フランソワーズはゆっくり視線を合わせると、にこっと至上の微笑みを浮かべる。

「大丈夫よ。私、お星様の破片(かけら)を見つけるのは得意、だもの……」
「……ごめん」
「どうしてジョーが謝るの?」
「それは……」
「ジョーは何も悪いコトしていないんだもの。謝る必要なんてないわ。そうでしょう?」
「いや、だけど……」

 そんなふうに言われても、苦い罪悪感は消えることが無い。

 確かに、彼女の言う通り……悪いことをしたとは思っていない。
 後悔もしていない。
 自分で決意し、自らが選んだ選択肢(道)だった。

 けれど……
 彼女を泣かせてしまった事だけは……紛れも無く自分の咎だ。

「そんな顔しないで。私は……大丈夫、よ」
「フランソワーズ……」
「だって……私は…何度でも、絶対に……貴方を見つけるから」

 この先、今まで以上に過酷な戦いに晒されても…
 どんな運命に翻弄されても…

 貴方という光は、必ず私が見つけ出すから…――。

「だから……待っていてね」
「……うん。でも……僕も君を捜すよ」
「それはダメよ」
「どうしてだい?」
「迷子はウロウロ動かずに、大人しく待っているものだわ」
「え;;; 迷子って……」

 ぴしゃり、と言い切られて、ジョーは苦く笑う。
 確かに、探し物(者)を見つける事に関しては、彼女には敵わない。

 でも、彼女にだって見つけられないものはある。

「見つけて貰えると良いけど……」
「あら、私が信じられないの?」
「信じても良いのかい?」
「もちろんよ」
「それじゃ……来世も…………もしも、生まれ変われたら……その時も、僕を見つけてくれるかい?」

 初めて出逢ったあの荒野の時のように……

 ――僕を見つけ出し、手を差し伸べてくれるのだろうか?――

 捨てられた仔犬のような不安げなジョーの瞳に、フランソワーズの何処までも優しい笑顔が映り込む。

「捜してあげる」

 ――必ず…――

「だから、ジョーは……ちゃんと待っていてね。約束、よ」
「約束?」
「そう、約束」

 フランソワーズは掌の中にある小さな破片を、そっとジョーの手へと落とす。

 それがまるで……約束の証のように。
 未来へと続く誓いのように…。

「フランソワーズ…」

 どちらからともなく、自然と…微かに重なり合った唇。
 互いのぬくもりを感じるほどに、更に愛しさが募り……堕ちていく。

 ひとつに解け合ったそのぬくもりが、名残惜しげに遠ざかると……2人は恥ずかしそうに微笑み合った。

「約束だよ。フランソワーズ…」
「ええ。だけど、ジョーったら……とんでもない迷子さん、ね」



― Fin ―












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2006/9/8 祐浬