~ Merry Christmas ~
for only precious ...


~ S w e e t C h r i s t m a s ~

― Story by Yuuri & Illustration by Shion ―



 大小様々なクリスマスツリーとリース、そしてカラフルなイルミネーション。
 繰り返される聴き慣れたクリスマスソング。
 華やかにラッピングされた街は、本当に綺麗で楽しげだった。

「賑やかね」

 解けて肩から落ちそうになった淡い水色のマフラーを巻き直しながら、フランソワーズは嬉しそうに雑踏を眺める。

 イヴがこんなにどきどきわくわくするのは何故だろうか。

 もうサンタクロースからプレゼントが届くのを願う小さな子供じゃないのに……・。

「やっぱりコート、車から取って来るよ」
「平気よ」

 車へと戻ろうとするジョーを、フランソワーズはすかさず引き止める。

 2人が居るのは、『Pastry shop Eternal Memory』の前。
 フランソワーズの一番のお気に入りの小さなケーキショップだった。
 予約していたクリスマスケーキを取りに来たのだが、狭い店の中は既に客でいっぱいで、外にまで列が溢れていた。

 まさか外で待つ事になるなんて思っていなかった為、フランソワーズはコートを近くに駐車場に停めたジョーの車に置いて来てしまっていた。

「皆ケーキを買うだけだから、そんなには待たないと思うわ」
「でも……」

 微笑みながらもきっぱりとフランソワーズに制止され、ジョーはどうしたものかと暫し悩む。

 確かに車にコートを取りに戻っている間に、ケーキは買い終えてしまうだろうし(加速装置を使えば別だが……)、彼女をこの場所に1人で残しておくことも心配だ。
 だが、刺すように冷たいこの大気の中に、コートを着ていない彼女をこれ以上曝しておく事も出来ない。

「じゃ、僕のを着てると良いよ」
「駄目よ。それじゃ、ジョーが寒いでしょ」
「それなら」

 ジョーはふと思いついた新たな打開策を、直ちに実行する。
 フランソワーズの背後に回ると、後ろから自分の着ていたジャンパーで彼女をふわりと包み込んだ。

「ジョー!?」

 突然抱き寄せられて、フランソワーズは青い瞳を益々大きく見開き、首だけ振り向いて彼を見つめる。
 ジョーは少しだけ照れながら、優しく微笑み返した。

「こうしていれば寒くないだろ?」
「ええ……」

 フランソワーズはこくんと頷く。
 凍え始めていた躯が、彼の温もりで徐々に融け温まっていく。

 フランソワーズは目を細めると、そっと自分を包む彼の手に己の手を重ね合わせる。

聖なる夜は……あなたのぬくもりに包まれて


「ジョーの手の方が冷たくなってるわ。ほら、こんなに……」
「僕は平気だよ。君よりは寒さに強いし、ね」
「でも……風邪ひかない訳じゃないでしょう」

 フランソワーズはそう言って、両手で彼の冷たい指を包み温める。

「それはそうだけど、さ……」

 ジョーは微苦笑し、言葉を濁す。
 確かにサイボーグであっても風邪をひかない訳では無い。

「折角のイヴに風邪を引いてしまったら大変だわ。ケーキを買ったら、早く帰りましょう」
「ん〜〜、それじゃ家に帰ったら、君にあたためて貰おうかなぁ」
「え?」

 ジョーの口からさらりと零れた言葉に……、その意味に気付き、フランソワーズはかあぁっと顔を赤く染める。

「勿論、君もあたためてあげるよ♪」
「もう、ジョーったら……」

 更に追い討ちをかけられて、フランソワーズは真っ赤に染まった頬を隠すように俯き、「嫌な人ね」と呟く。

 そんな、初々しくて可愛らしいフランソワーズを、ジョーは己の激情のままに益々強く抱き締めた。

 愛しい。

 改めて……
 強く、そう思う。

「ジョー……、あの……そんなキツクしたら……痛いわ」
「ごめん」
「少し、ゆるめて……」
「ヤダ」

 駄々っ子みたいなジョーの返事に、フランソワーズは「もうっ」と唇を尖らせ、けれども、それ以上咎める事も、抵抗する事も無く彼に凭れ、そのあたたかな温もりに身を委ねる。

 人の往来の激しい場所でこんなにも密着している事は、凄く恥ずかしい。
 けれど、それ以上に嬉しくて、どきどきしている自分に気付く。

(どきどきするのは……イヴだからじゃないんだわ……)


 ………傍に、貴方が居るから……………

~ Fin ~

Christmas Special Story
― vol.2 ―

 

 

 

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